オカエ・ザ・超雑記帳

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MTGとの蜜月

MTGとは、世界最古にして未だ現役のトレーディングカードゲームMagic the gatheringの略称である。

ミーティングの略ではないので注意頂きたい。とかくミーティングをMTGと略しがちなビジネスパーソンの諸君、近くのデュエリストが反応してしまうので今後は正しく「会議」と言ってくれたまえ。

さて僕とMTGはもう20年近い関係になるが、僕とMTGは煮え切らない恋人達の様に付いて離れてを繰り返している。

砂利っぽい箱ブランコの上でデュエルをした事もあったし、教室でもたくさんのデュエルを重ねた事もあった。 修学旅行の部屋で隠れてデュエルをした事もあった。秋葉原のマックで、飲茶(仮名)の家で徹夜デュエルしたのも今となっては良い思い出だ。

話は変わるがデュエルという言葉は最高だと思う。 やんちゃさと幼稚さの中に男のプライドと小バカにしてる感が合わさってる言葉ランキングを作ったら、間違いなく優勝だろう。

 

閑話休題

 

僕は今年で29になる。 放蕩ばかりしている歳でも無くなってきたので、ここらでMTGとの関係にけじめを付ける必要があると感じている。

特にここ数年は自分のカードをろくに持たず、※1半引退グランプリプレイヤー、あるいは※2デッキ借受け小作農、等という謎のスタンスを貫いてきたが、そろそろMTGとの関係に決着を付ける時が来たのだ。

 

※1半引退グランプリプレイヤー

引退を公言しつつガチ度の高いグランプリに遠征するプレイヤーの事、何回も一夜限りの復活をするロックバンドと大体同じ理屈である。

※2デッキ借受け小作農

デッキを所有する豪農からデッキをお借りさせていただいて大会へ赴き、好成績を収めて賞品を手に入れた際に、デッキ賃貸料としてマージンを納めるプレイヤーの事

 

そもそも、なぜ※1、※2のようなことをしているのか?自分のデッキを持てばええやん?と疑問に持つ人もいるだろう。理由は単純でMTGのカードが高え、以上である。

 

例えば、ここにバボカというカードゲームのデッキがある、バボカは「ハイキュー!」題材の女子にも根強い人気を誇る素晴らしい奴で、ここにあるデッキは大会でも優勝を狙える強いデッキだ。

MTGの高いカードが1枚あれば、バボカの強いデッキを1束(40枚)作れてしまうのだ。日本円ではなくTCG同士の例え話で語る事にカードゲーマーとしての矜持がある。

MTGのカードの値段が高い事はなんとなくお察しいただけただろう、とはいえ僕も社会人を5年やっている、正直に言えばMTGのデッキ位ポケットマネーで作れない事はない。

僕がMTGのデッキを持たない理由はもう一つある。

一度、ただ一度、実の兄にほぼ全てのMTGのカードを二束三文で売られた事がある。今から五年前の事だ。その日を境に、僕は半引退デッキ借り受け小作農グランプリプレイヤーへの道を歩む事となった。

一人暮らしをする際にカードたちを実家に置いてきた事が運の尽きだった。その時期はMTGと僕の心が離れていた時期だったので、軽い気持ちで置きっぱなしにしていた。

 

ある日電話が鳴ったので出てみると、兄からの電話だった。

「今度実家帰るけど、お前の部屋掃除しとくついでに要らない物捨てとくよ。」

「ああ、お願いします。」

僕の認識ではMTGのカードは有価証券であり、有価証券=要らない物の等式は当然成り立たない。ただし僕の持ち物の内、兄にとっての要らなくない物とはギブソンサンダーバード位だったらしい。

・・・こうして僕のMTGのカードは二束三文の現金に換えられた、ついでに言えば巻数が多くおいおい現住所に移行しようと思っていた漫画達もすべて売られていた。さらに言えば、そこで発生した二束三文は全て兄の懐に入り、時を経て姪のオムツに等価交換されたのだ。「精神を刻む者、ジェイス」が姪の尿を堰き止め、「喧嘩商売」が姪の便を受け止めていた。そう考えると姪思いの良い叔父である、こちらの支出としては一生分のお年玉をやった訳だから、姪は金輪際お年玉をねだるべきではない。

ただ、当時を振り返れば、人の物を勝手(※了承済)に売りやがって死ね、という気持ちとともに少し晴れやかな気持ちもあった。

MTGのカードは物理的に生活を圧迫していた。ペラいとはいえ体積があり、多種にわたるカードがある以上、そこそこの整理整頓と収納スペースを求められていたからだ。煩わしいものが消えた、これを機に紙のカードゲームは完全引退しよう、そんな風にも思えるようになっていた。

こうして僕はカードの所有をやめてデッキを持たなくなった。そしてカードの所有をやめたらMTGを忘れる事が出来ると思っていた。

 

MOというPCのアプリがある。正式名称をMagic The Gathering Onlineと言う。

実家を離れ一人暮らしを始めた僕は、ちょくちょくこのアプリでMTGを遊ぶ様になった。紙で資産を管理しないでもよいし、デジタルならではの遊び方もあり楽しい。

僕とMTGは離れていなかった。

学生の頃一緒に遊んでいたデュエリスト達にグランプリやプレリリースに誘われホイホイ付いていく。こうして半引退デッキ借り受け小作農グランプリプレイヤーとしての地位を確立していく。

僕とMTGは近づいている。

 

もうね、全然引退できないっすね、MTGというカードゲームは面白いっすわ、中年目前になっても全然飽きがこない。論理的思考を教えて貰ったし、煽りへの対処を教えて貰った恩もある。高校以前から付き合ってる友達は大体MTG繋がりだし、気付けばライフワークだったのかもしれない。

完全に引退するのはおそらく開発元のウィザーズオブザコーストがサポートを終了した時だろう。

自主的に引退しない事を決めたのなら、つまりこれからもよろしくねと言う事であり、先立つ物、デッキを作る事に決めた。 冒頭に戻るが、こんな形でMTGとの関係に折り合いを付ける事にした。

 

カードを売られてデッキが無いという状況は、時として不利益も多かった。小作農的な大会参加をしていても、自分の取り分がデッキ賃貸料として搾取される事になる。

前回のグランプリでは、スタンダードのデッキを1から組む為に1週間分位の給料を使った。良い値段をかけて作成したデッキは、半引退プレイヤーである事からグランプリ後にはタンスの肥やしとなり、全く減価償却出来ていない。

これらを見返してみると、自分のデッキを持っておく事は悪い選択肢では無いのだ。

 

レガシーを始めることにした。 レガシーとはMTGの公式フォーマットである。

レガシー - MTG Wiki

 

MTGのフォーマットには色々あるが、このレガシーというルール上ではこれまで発売されたほぼすべてのカードが使用可能となる。

つまり一度デッキを組んでしまえば(流行り廃りはあるもののの)同じデッキをずっと使い続ける事が出来る。

一見すればお得ではあるが、デメリットも存在する。イニシャルコスト(初デッキ作成費)の高さである。

レガシーのデッキを錬成すると軽自動車が出来上がるのはザラである。

これまで発売されたほぼすべてのカードを使用可能、を言い換えれば、現在印刷されていないカードを使用してデッキを組む事であり、つまり供給が絶たれているカードを使う事である。供給が絶たれる事で必然的に需要過多となり、カードの高騰が起こる。

例えばここに「Underground Sea」というカードがある、このカードはデッキに4枚入れるべきカードだが1枚約30000円の値が付いている。4枚ならば120000円、アウトドアセット一式が買えそうな値段だ、アウトドアセット欲しいキャンプしてえ。

ならば「Underground Sea」を使わなければ良いのだ。「Underground Sea」は1995年ごろまで印刷されていたとりわけて古いカードであり、プレイヤー数の増大に伴い印刷枚数を増やした昨今のカードと比べて、市場に出回る量はごく少数となるため、アホの様な値が付く。

ただし「Underground Sea」は一例に過ぎない。供給の絶たれたカードではあるが、最近印刷されたカードであれば、印刷された絶対数があり出回る量も多い、そういったカードで構成されたデッキならば、アウトドアセット一式で錬成出来るデッキもあるのだ。

結局の所その位の価格帯で一生遊べる玩具を持てる事は、僕の感覚では釣り合いが取れていた。

そうして僕はデスタクを作る事に決めた。